「太陽光パネルの点検が義務化された」という電話や訪問をきっかけに、高額な洗浄・コーティング契約を結ばされるトラブルが増えています。国民生活センターの集計では、太陽光発電システムの点検商法に関する相談件数は2024年度に613件となり、前年度の304件からほぼ倍増しました(詳しい統計は点検商法の相談件数推移データで解説)。この記事では、よくある勧誘の手口と、契約前に確認すべきポイント、契約してしまった場合の対処法を解説します。
太陽光発電システムの点検商法とは
太陽光発電システムは、電気事業法や再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)などの関係法令に沿った維持管理が求められる設備ですが、点検が義務付けられるかどうかはFIT制度・FIP制度の利用の有無や出力等により個別に異なります。この「点検義務」の存在を悪用し、「点検が義務化された」などと事実と異なる、あるいは誇張した説明をして不要な点検や高額な契約を迫る手口が、国民生活センターに報告されています(国民生活センター報道発表「太陽光発電システムの点検商法が急増!」)。
よくある勧誘の手口
- 突然の電話や訪問で「太陽光パネルの点検が法律で義務化された」と説明する
- 「パネルによる火災事故が起きている」など不安をあおる説明をする
- ドローンやサーモモニター(赤外線カメラ)で点検し、「異常が見つかった」と説明する
- 点検結果をもとに、洗浄・コーティングなどの契約(数十万円規模)をその場で迫る
相談事例では、「パネルの点検が義務化された」と説明を受けて無料点検を承諾したところ、後日ドローンによる点検が行われ、「サーモモニターで確認したところ赤くなっているので洗浄とコーティングが必要」と説明されて約40万円の契約をしたケースが報告されています。契約者の家族がインターネットで調べたところ「だまされている可能性がある」と気づき、解約を検討する事態になりました(国民生活センター公表事例)。
契約前に確認したいポイント
1. 「点検が義務化された」という説明は事実か
太陽光発電システムの点検義務の有無は、FIT・FIP制度の利用状況や設備の出力等により個別に判断されるものであり、一律に「義務化された」と言い切れるものではありません。説明を鵜呑みにせず、契約している電力会社や販売施工店、あるいは一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)などの情報で確認しましょう。
2. 東京都の新制度と混同していないか
東京都では2025年4月から、一定規模以上の新築住宅等を供給する事業者を対象に太陽光発電設備の設置等を義務付ける制度が始まっています。これは新築を供給する事業者向けの設置義務化であり、既存住宅の所有者に「点検」を義務付けるものではありません。制度の混同を狙ったとみられる説明には注意が必要です。
3. 点検結果の説明は具体的で検証可能か
ドローンやサーモモニターによる点検結果を示された場合も、その場で契約せず、撮影データや画像の提供を求め、他の業者にも意見を聞くことをおすすめします。
4. 「補助金が使える」という説明も鵜呑みにしない
点検商法の延長で、蓄電池の追加設置や太陽光パネルの更新を「国の補助金で実質負担が軽くなる」と勧められるケースもあります。補助金の対象条件や金額は制度ごとに細かく定められているため、業者の説明だけで判断せず、各制度の公式サイトで自分でも確認しましょう。補助金を口実にした勧誘全般の手口と確認方法は「国の補助金が使える」に注意|リフォーム勧誘の手口と確認法で解説しています。
本当に点検・メンテナンスが必要な場合の依頼先
太陽光発電システムは経年劣化や汚れにより発電効率が下がることがあり、定期的な点検・メンテナンス自体が無意味というわけではありません。ただし、その必要性や時期は、設置時に契約した販売施工店やパワーコンディショナのメーカーなど、自分で選んだ信頼できる窓口に相談して判断するのが基本です。突然の電話や訪問をきっかけに、その場で契約を急ぐ必要はありません。
被害を避けるための対応
- 電話等で「点検が義務化された」と言われても、その場で日程を約束せず、まず事実関係を確認する
- 点検・メンテナンス契約をする場合も、その場で契約せず複数社から見積もりを取って比較する
- 契約前に特定商取引法上の書面(クーリングオフの説明を含む)を必ず受け取る
- 契約を急がせる業者については、建設業許可の有無など実態を事前に確認する(業者の建設業許可の確認方法も参照)
契約してしまった場合の対応
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 契約書面受領から8日以内 | クーリングオフで無条件解除が可能(訪問販売・電話勧誘販売とも対象) |
| 「点検が義務化された」など事実と異なる説明を受けた | 特定商取引法に基づく取消しを主張できる可能性 |
| 点検結果の根拠に疑問がある | 他の施工店や専門家にセカンドオピニオンを求める |
訪問販売や電話勧誘によるクーリングオフの具体的な手順は訪問販売のクーリングオフ手順で解説しています。
相談先
国民生活センター・消費生活センター(電話188)に、勧誘の経緯や契約書面の内容を伝えて相談してください。国民生活センターは本件について一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)と一般社団法人日本電機工業会(JEMA)に消費者への情報提供強化を要望しており、両団体のサイトでも点検の勧誘に関する注意喚起が公開されています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 太陽光パネルの点検は本当に義務なのですか。
A. 点検義務の有無はFIT・FIP制度の利用状況や設備の出力等により異なり、一律に義務化されているわけではありません。契約している電力会社や販売施工店に確認することをおすすめします。
Q2. すでに洗浄・コーティング契約をしてしまいました。解約できますか。
A. 契約書面を受け取ってから8日以内であればクーリングオフにより無条件で解除できます。8日を過ぎている場合でも、事実と異なる説明があった場合は取消しを主張できる可能性があるため、消費生活センターに相談してください。
Q3. ドローンやサーモモニターで「異常あり」と言われました。信じてよいですか。
A. その場で契約せず、点検結果の写真やデータの提供を求め、他の業者や専門家の意見も確認することをおすすめします。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、契約解除や交渉の結果を保証するものではありません。個別の状況については、消費者庁、国民生活センターにご相談ください。